平成28年10月からの社会保険の適用拡大について~後編~

前回は社会保険の適用拡大によりこれまでパートで勤めておられた方が新たに健康保険と厚生年金の被保険者になられることで、実際にどのような影響があるのかということについて書かせていただきました。

今回は、この法改正が現在年金受給中の方にとってはどのような影響を及ぼすのかという点について見ていきたいと思います。

参考までに、老齢年金の支給開始時期は現在65歳に向かってどんどん引き上げられており、今年(平成29年)60歳になられる方(昭和32年生まれ)は男性の場合、4月1日生まれまでの方は62歳から支給。4月2日以降生まれの方は63歳から支給。女性の場合は男性より5年スケジュールが遅いため、60歳からの支給開始となります(共済で女性の方は男性と同じスケジュール)。これは65歳前のいわゆる特別支給の老齢厚生年金と呼ばれるもので、厚生年金(共済年金)を1年以上かけておられ、かつ基礎年金の受給資格を満たしておられる方に支給されるものです。

 

年金を受給しながら働く場合(社会保険に加入)には、その年金額と給与・賞与の額が一定額以上であると年金が一部カットとなります(これを在職老齢年金と呼びます)。ですので、もし65歳未満で報酬比例部分のみの年金受給者の方(定額部分もある場合はそれも含めてカットの計算がされる)で、これまではパートでおられたのに平成28年10月より社会保険の適用となった場合は、年金の一部(全部)停止の可能性が出てきます。この停止された部分は返ってきません。ですが退職や給与が少なくなった場合などは停止が解除され全額支払われることとなります。この原則は変わりません。

 

問題は、長期特例(44年以上厚生年金や共済年金をかけた後、退職(喪失)した方)や障害者特例に該当し、既に厚生年金の定額部分(場合によっては加給年金も)を受給しておられる方が、社会保険の被保険者になられた場合です。原則、これらの方が被保険者になられた場合、定額部分と加給年金は全額停止となり、本来の報酬比例部分にも在職老齢年金のルールによって一部(全部)停止がかかってしまい、受給者の方にとっては大幅に年金額が減ってしまう事態になります。

 

この原則のルールは変わっていませんが、今回の法改正の前から同じ事業所に勤めておられる方で労働時間・労働日数等なにも変わっていないのに、適用基準が変わったために社会保険の適用対象者となってしまった方については、経過措置として、『障害者・長期加入者特例に係る老齢厚生年金在職支給停止一部解除届』を出すことによって、定額部分・加給年金部分については支給停止が解除されることになります。ただし、当面の間は、定額部分・加給年金部分については、本来の年金支給月の翌月(奇数月)に1ヵ月遅れで入金されてゆくこととなります。ただし、報酬比例部分については原則通り在職老齢年金のルールによって年金の一部(もしくは全部)カットは適用されます。

 

この経過措置は手続きしていただかないと適用されませんので、上記に該当する方は一度最寄りの年金事務所でご相談ください。